生徒会の魔王様

4/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 『創造性と自主性を育てよう』をスローガンに掲げた明学は、通常の高等学校では考えられない規模を誇っている。いわゆる、マンモス校だ。  それも、並のマンモス校ではない。生徒人数、壱万と弐千。明学の莫大な敷地面積は三百平方メートルと東京ドームの弐百五拾個分にも相当し、その広大な大地に、武道館を初め、総合体育スタジアム、国際文化交流会館、明学大食堂、明学ミュージアム、寄り合い議事堂といった、豪勢で利便性も高い建築物が軒を並べている。  正規のルートで学費を払った生徒であるならば、入試成績と身体測定の結果で良い順からプラチナブラック、ゴールド、シルバー、ホワイト、イエロー、レッドと学生証の色が振り分けられ、限定される場所もあるが、それでも一介の高校生には不相応の多目的施設のおおむねを、タダで利用することができるのだ。尚且つ、生徒会の許可が下りさえすれば併用することもできるのだから、まさに至れり尽くせりだ。  高校生にとっては破格の待遇と言える。  そのガリバー性と施設の充実具合故に、明学は大學でもないのに『明星キャンパス』と誉れ称され、ここ辺りに住む地元民の憧憬の的になっている。もちろん、恭介も例外ではなかった。  しかも、学業面を見ても、申し分のない大學への進学率を誇っていて、この豊饒の地から巣立ち、業界の第一線で活躍しているOBも多い。  だから、少々学費が高くても、人生の岐路に立たされた恭介が明学を進路調査表第一志望に設定するには魅力的過ぎた。運良くも、というよりも、元々受け入れ人数枠が大きかったのもあって、恭介の凡庸な学力でも無事に入学することができた。  そして、生徒人数が多いことにも対応してか、特殊な学科も含め、美術、音楽、特別進学、文学、etc――総じて弐拾弐部とコースのバリエーションも豊富である。一つの学科に約五百人いることになるのだから、それだけで一つの専門学校のような体裁を整えていた。  何としてでも合格したかった恭介は、その中から一つの学科に絞るのにだいぶ苦労したが、とりあえず、一番無難で自由度の高い普通科を選択した。他の学科にいつでも転科編入できるという利点が決定打になったからだ。加えて、恭介の実家から明学まで徒歩七分。最寄り駅まで徒歩十分と立地条件も完璧である。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!