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「驚かせてしまいましたか?」
声から白い服に身を包む人物が男性だと分かる。男性は申し訳なさそうに眉をひそめながら彼を見ている。
それにどう反応して良いのか分からず、彼は口を開いたまま男性を見つめていた。
「……あぁ、少しな」
本音を言えばかなり驚いた。この状況下で驚かない人がいるなら見てみたい――と彼は心の中で囁いた。
「立ち話もなんですから座りましょう」
彼のあまりに分かりやすい反応に、男性は薄く笑いながら席に座るよう勧めると、彼は警戒心から無言で頷き、机を挟むようにアンティーク調の白い椅子を引いて、腰を下ろした。
「それで……あんたは誰なんだ?」
彼としても最早分かっているのだろうか、その事実を戸惑いつつ確認するように尋ねた。
仮にも考えが合っていたとして、彼はどうする事も出来ずにいるのだろう。
「神様です」
目の前に座っている男性は予想通りの返事をしたために、彼は額を片手で押さえて項垂れた。
信用に値するのか……そうだったとして結局俺は死んでいるんだ――と感慨に浸った。だが、それと同時に無機質な感情があらわになった。
悲しくなければ、寂しくもない。ただただ死んだという事実のみを受け止めてしまう。いや、達観して認めてしまった。
彼にとっても神様にとっても、それが何よりも悲しいことだ。
――神様なんて居る筈がない。
ぱっと出たその言葉が彼の脳裏を掠める。
この人が神様でなければ、俺は死んでない。何故なら死んでないなら神様に会う筈がないから。そもそも神様が居たとして、何故俺を救ってくれなかったのか――。
自分でも理解できる程に矛盾した悪あがきだ。
「それは悲しいですね」
そうか……? 俺まだ何も……まさか?!
彼は自分自身が口に出していない事に返事をされ、目を見開いて正面に座る神様と名乗る人物を見つめ、心を読まれていると脳裏に浮かべた。
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