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それを肯定するかのように神様は頷きながら口を開いた。
「えぇ、貴方の考えている事は全て私に筒抜けです。何せ神様ですから」
彼が信じられないと言わんばかりの表情をしたために、神様は呆れたように額に手を当て、やれやれと首を左右に振った。
「じゅ、じゃあここは天国なのか?」
動揺を見せ、出だしを噛むものの言い直して尋ねた。力を見せ付けられた以上、神様だと認識する他にない。だが、それでも裏付けが欲しかった。
ここが天国ならば矛盾は消え、虚無が残る。死んでしまっているのに後悔や悲哀なんて要らない。ただ真実が知りたい。今の彼を動かすものは、たったそれだけなのだ。
「ここは私の部屋です。顔……引きつってますよ」
その顔が面白かったのか、神様は軽く握った手を口に当て、くすくすと笑っている。
何故顔が引きつっていたのか、それは神様の回答が、回答になっていないからだ。
彼は噛んだ事を指摘されるとは予想していたが、まさか違うところを指摘されるとは思わず、苦笑いを浮かべて視線を泳がす。その時彼は不意に思った。
なんで神様を信じていなかったのか。
彼がその理由を求めて、思考を巡らせ記憶を遡(さかのぼ)ろうとした時――
「っ!!」
彼は激痛に表情を歪めた。記憶を遡ると同時に、何かのフィルターが掛かったように頭に激痛が走ったのだ。そのあまりの痛さに机に肘を立てて頭を抱える。
くそっ!! どうなってる! 俺の名前も、死んだ理由も、家族が居たかさえも思い出せない……!
「あまり無理をしない方が良いですよ」
悲しみにも似た表情を浮かべながら神様は続けた。
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