プロローグ

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「………早くどっか行ってよ……。私は大丈夫だから………」 夕暮れの街。 夕日が差し込む路地。 私は顔を俯かせて泣きそうになっている顔を隠す。 男に泣き顔なんて見せたくない。 「声も身体も震えてる奴のどこが大丈夫なんだよ。……泣きたい時は素直に泣けよ…」 どこか呆れたような声で言う彼。 私は顔を上げて彼の顔を見る。 無表情な彼と目が合う。彼は静かな声で言った。 「泣くならさっさと泣け」 ぶっきらぼうな言葉だけどその声は慈しむような優しい響きをもっていて。 私の涙腺を見事に刺激して。 私は生まれて初めて男の前で泣いた。
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