第六十夜

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 そのバラバラのかけらが、ご丁寧にも卵の殻の中に納められ、布切れで飾られていたんです。  英子さんからはなんの証言も得られませんでした。 ご両親もなんの物音も聞いていませんでした。  結局、英子さんが無理矢理妊娠させられたことを恨んで一樹さんを殺したのだろうということになりました。  けれど、不可解な点が多くあります。警察も未だその謎を解いていません。 というより、解く気もありません。  卵の殻にあけられた穴より大きな骨片が、どうやって中に納められたのか。  どれも穴を布でふさがれていたのに、前日の晩に彼が目撃されている。たった一晩の作業とはとても思えないこと。  そして、粉々に引き裂かれた現場が、どこにもみつからなかったこと。  何より、道具なしに人力で人を引き裂くことができるのか。それも粉々に。 できるわけがない。  英子さんは、今は精神病院にいるそうです。  おなかの子供がその後どうなったのかは聞いていません。  一樹さんが何にどのようにして殺され、いかなる方法で卵の中に入れられたのか。  解答はありません。
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