始めに

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小説に説明を書いてはいけないと言うが、自惚れは誰にでもあるもので、この話が万一ヨーロッパのどこかの国の言葉に翻訳されて、世界の文学の仲間入りをするようなことがあったとき、他所の読者に分からないだろうと、作者は途方もない考えを出して、いきなり説明を以てこの小説を書きはじめる。百物語とは多勢の人が集まって、蝋燭を百本立てて置いて、一人が一つずつ怪談話をして、一本ずつ蝋燭を消していくのだそうだ。そうすると百本目の蝋燭が消された時、真の化け物が出ると云うことである。事によったら例のファキイルと云う奴がアルラア・アルラアを唱えて、頭をふっているうちに、てきめんに神を見るように、神経に刺激を加えていって、一時幻視幻聴を起こすに至るのではあるまいか。 BY森鴎外 百物語(記憶には自信があるけれど、うる覚えです(笑))
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