あなた色に染まりたい

ストーカー

手を裾から晴希の腕に移してぎゅっと掴む。

「ごめ、なさい。デート、できません」

早くこの場を去りたくて、なんとか声を絞り出してそう訴えてみたけれど。

「一回でいいんだって」

し、しつこいっ。

「無理だって言ってんだろ？」

「おまえ、うるせえ。黙っててくんねえ？」

晴希の言葉も全く聞き入れてくれなくて。

蓮っ！　どうしよう。

心の中で、つい、蓮を呼んでしまう

「紗羽！」

「蓮っ！」

心の声が届いたかのように、蓮がタイミングよく息を切らしながらやってきた。

そのまま蓮に手を伸ばして抱きつく。

「おせえから心配した」

「うん」

「晴希さん、すみません」

「いや、こいつがなかなかしつこくてさ」

晴希が親指で目の前の人を指差す。

蓮がその方向へと視線を向ける。

「鳴海さんでしたっけ？」

今度は蓮が鳴海くんと向かい合った。

「は？　おまえ誰？」

「紗羽と付き合ってる水島といいます。もう紗羽には近づかないでもらえます？」

「へぇー、紗羽ちゃんって彼氏いたんだ。最初はいないって言ってなかったっけ？」

だって、まだ蓮と付き合う前だったから。