6944人が本棚に入れています
本棚に追加
「前に話したこと忘れた? 俺、この講義ん時に紗羽にコクったんだけど」
「え?」
思わず晴希の顔を見た。
そういえば『好きだった』って言っていた。
でもそれって……
「過去のことでしょ?」
「大輝さんと会ってないって聞いて『もう一度頑張ってみようかなと思った』って言ったじゃん」
そういえばそんなことを言っていたかもしれない。
「……」
聞かなきゃ良かった。
「そんな困った顔すんなよ。俺、紗羽が幸せならどうこうするつもりねえし。この間も言ったじゃん」
そうだけど。
「それより俺は、紗羽の話の方がショックだった」
「え」
晴希は眉を寄せながら視線をそらしてしまったけれど、あたしの話って?
ショックを受けるような話なんてしたっけ?
「大輝さんとのことだよ」
「あ……」
そういえばこの間話したとき、大輝の話をしたあとの晴希は別人だった。
いつもは輪の中心になって面白可笑しく話を広げたりしている晴希が、一人の世界に入ってしまったように黙りこくったままずっとビールを飲み続けていたんだ。
「俺さ、大輝さんのこと、すっげえ尊敬してたんだ」
「うん、知ってる。大輝も晴希のことをよく話していたし」
最初のコメントを投稿しよう!