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「俺は今でも紗羽のことが好きだ。あの時から忘れたことは一度もねえよ」
大輝の口から発せられた言葉の意味がわからない。
「あたしは、やっと忘れられたのに……」
「なあ紗羽、何であんな大切なことを忘れんだよ！ 思い出せよ！」
目の前で大輝が声を荒げて言い放っているけれど、こんなに感情をむき出しにした大輝は見たことがない。
それに大切なことって何？
わかんないよっ！
「なんて言ったの？」
「紗羽が自分で思い出さなきゃ意味がねえ」
「わかんないよ」
あたし、そんなに大切なことを忘れてしまったの？
ほんとに思い出せない。
「……紗羽は、さっき隣にいた男と付き合ってんのか？」
「うん」
「……」
「ずっと大輝のことを忘れられなくて、でも彼と出会ってやっと思い出にできた」
「何で思い出なんかにすんだよ。俺はまだ現在進行形だっつうのに。……なあ紗羽、次会う時までに思い出せよ。また来るから」
そう言って大輝は帰っていった。
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