6943人が本棚に入れています
本棚に追加
.
あれから数日経ったけれど、あたしはいつも心ここにあらずでぼーっと過ごしていた。
みんなが気を遣ってくれているのがわかっていたけれど、それに応えることもできなくて……
蓮も変わらず接してくれるけれど、あたしの心がついていかなかった。
この日もいつものように、講義が終わったあと晴希と二人で食堂へ向かっていたら……
少し前方から、こっちへと向かって歩いてくる人。
ドキドキドキドキ……
隣を歩く晴希もその存在に気付き、呟くように声を漏らす。
「大輝さん」
「今日は紗羽と晴希の二人だけか?」
晴希の声が聞こえたのか聞こえなかったのかは定かではないけれど、大輝がそう訊いてきた。
「同じ講義だったんで。今からみんなと会いますけど」
二人が話しているのをどこか遠くで聞いているような……そんな感覚になった。
大輝は、あたしに会いに来たんだよね……?
あの約束を思い出したか、確かめに来たんだよね……?
最初のコメントを投稿しよう!