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「いつ帰ってきた?」
「えっ」
あっ、そっか……
「……ごめん、部屋に行くのを忘れてた」
あたし、晴希から蓮に『あとで蓮の部屋に行くから』って伝言を頼んだのに……
きっと蓮はいつまで経っても来ないあたしを心配して様子を見に来たんだ。
「それはいいけど、……紗羽、泣いた?」
さっき泣きながら眠りについたから、目が腫れているのかな。
蓮の冷たい指がそーっと瞼に触れた。
お互いの視線が交わっているけれど、言葉はない。
でも、蓮の低く掠れた声がその沈黙を破った。
「なんかあった?」
「……」
「紗羽?」
蓮があたしの表情をうかがうように訊いてくるけれど……
どうしよう……
自分の気持ちが分からない。
蓮のことが好きだって想いはほんと。
でも大輝とのキスが嫌じゃなかった。
キスが嫌じゃない=好き
ってことにはならないよね?
ずっと考え込むように俯いていたら、蓮がやさしく諭すように口を開く。
「紗羽、何でも言って? 隠し事はなし。じゃねぇと、俺、紗羽のことを支えられねぇし」
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