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話し足りなかったのか、さっきまでの蓮とは別人になってしまったかのように続けて口を開く。
「この間は一時間も連絡ねぇし? 今日は部屋に来るって言ったのに来ねぇし? 紗羽にとって俺はそんなにすぐに忘れられる存在だったんだって……結構へこんでんだけど」
俯き加減で話していた蓮はゆっくりと視線を上げて、強い想いのこもったその瞳であたしをとらえた。
その瞬間、どきんっ、と高鳴った胸に軽く手を添えて口を開く。
「……ごめん、あたしが悪いね。ちょっぴり寂しくなったの。蓮は今みたいに感情を表に出すことはないから。あたしばっかり好きなんじゃないかって……」
「俺がどんだけ紗羽のことを好きかわかってねぇの?」
そう言って俯いていたあたしの顔を覗き込んできた。
その瞳にはやっぱり強い想いが感じられて、どきどきと鼓動が走り始めた。
「今まで紗羽には“好き”って感情は、嫌って程伝えてきたつもりだけど……」
それは、わかってる。
でもそれって、付き合う前の話だよ。
付き合ってからはあたしの方が“好き”って想いを伝えている。
あたしの方が“好き”が増えているんだ。
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