行かないで

8/11
前へ
/358ページ
次へ
「紗羽、ちゃんと言って? 言わねぇとわかんねぇ」 こんなこと言ったら蓮に嫌われちゃう。 あたしから離れていっちゃう。 やだ…… やだ…… やだっ――… 「紗羽」 何も言いたくなくて首を大きく横に振った。 「紗羽?」 蓮の両手があたしの頬をやさしく包む。 涙が勢いを増してぽろぽろと溢れてきた。 「何で言えない?」 「蓮に、嫌われちゃう。……蓮が、あたしから……離れていっちゃう」 「俺、紗羽のことを嫌いにならねぇよ。紗羽から離れていかねぇよ」 蓮はそう言うけれど…… そんなの、わかんないじゃん。 「……」 「紗羽?」 怖くて、言えないよっ! 蓮は不安いっぱいのあたしをやさしく抱き締めた。 あたしも蓮の背中に手を回してぎゅっと抱きついた。
/358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6943人が本棚に入れています
本棚に追加