6943人が本棚に入れています
本棚に追加
「寒くねぇ?」
蓮はやさしく微笑みながらあたしの顔を覗き込んで来た。
そういえばさっき服を脱がされたままだったんだ。
でも蓮の温もりを感じるから寒くはない。
だから首を横に振ってそれを伝えた。
「俺、今……最高に焦ってる」
抱き締められながら蓮を見上げると、さっきまで柔らかい笑みを浮かべていたのに、今は眉を下げて悲しそうな表情をしている。
「元彼の大輝さんに紗羽を持っていかれるんじゃねぇかって……」
蓮の本音にどきんっと胸が鳴る。
一瞬といえども揺れたのは確かだった。
「紗羽が、大輝さんのことをどんなに好きだったかも、別れてどんなに傷ついたかも知っているから……」
それだけ言うと、抱き締めていた腕を緩めて蓮はあたしの目線に合わせてきた。
「紗羽は俺が好き?」
「うん、大好き」
「大輝さんにキスされて揺れなかった?」
「えっ」
動揺した……
どきどきと胸が痛く騒ぎだす。
「やっぱり……」
蓮はどこか遠い目をした。
「俺と大輝さん、どっちが好き?」
「何で? 何でそんなことを訊くの? 蓮に決まってるじゃん」
いくら揺れたとはいえ、蓮が好きだって想いは変わらない。
なのに、それを否定された気がして涙がぽろぽろと溢れてきた。
最初のコメントを投稿しよう!