行かないで

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「紗羽?」 「蓮が好き! 大好き! 抱き締めてほしいのも、キスしたいのも、抱いてほしいのも、蓮だけっ!」 蓮への想いが本物だということを必死で伝える。 それでも蓮の表情は変わらなくて。 「紗羽……でも、キスされて揺れたんだろ?」 「ちがっ……」 「じゃあ、さっき何で動揺したんだよ」 「キスされて抵抗してたけれど……嫌じゃなかったの。それがショックで……」 「そっか」 そう言って視線をそらした蓮。 その仕草を前に、トクントクン……と、胸が騒ぎ出す。 蓮はそのまま床に落ちているあたしの服を拾って渡してきた。 「蓮?」 トクントクン…… 震える手でその服を握り締める。 「今日はもう帰るよ」 「れ……ん?」 「じゃあ、おやすみ」 そう言って蓮は背中を向けた。 「ま、まって!」 行かないで! 蓮の腕を掴んで引き止めるけれど…… 「紗羽、ごめん。……今日は帰らせて」 さっきと同様眉を下げたままそう言った蓮は、あたしの手をそっと引き離し、そのまま背中を向けて玄関から出ていってしまった。
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