行かないで

11/11
前へ
/358ページ
次へ
「……ふ……くっ……」 蓮の姿が見えなくなったとたん、目から涙がぽろぽろと溢れてきた。 だから言いたくなかった。 蓮はきっと、大輝のキスを嫌がらなかったあたしのことを嫌いになったんだ。 やっぱり嫌われた。 離れていった。 嫌いにならないって…… 離れていかないって…… そう言ったのにっ! 涙が止まらないよ。 そのままいつの間にか泣き疲れて眠ってしまったようで、深夜に凄く寒くて目が覚めた。 「寒い……」 下着だけを身に付けたままで寝ていたらしい。 「はは」 と、乾いた笑いが出た。 そのままスウェットの上下を着て布団に入った。 寒い…… 頭もずきずきする。 風邪引いちゃったかな。 ……そしてまた、眠りに就いた。 夢の中の蓮はいつものように笑顔で、凄くやさしくて、手を繋いだり抱き締めたりしてくれた。 目が覚めたら、いつものようにやさしい笑顔で「紗羽」って呼んでくれる蓮がいるといいのにな。
/358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6943人が本棚に入れています
本棚に追加