6943人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ほんとはすっげぇ嫌だけどそのおかゆ下さい。紗羽、食べれる?」
「うん」
『うん』とは言ったけれど、元彼が作ったものを彼女が食べるって嫌に決まっている。
蓮に申し訳なくて涙が出そうになってきた。
それでも今はそのおかゆを食べて薬を飲んだ方がいいと思うから、大輝が持ってきてくれたそれを少し食べてから薬を飲んだ。
「大輝さん、合鍵を返してください」
「やっぱ返さねぇと駄目?」
「当たり前です!」
蓮が真剣な表情ではっきりと言い放つのを見て、また心臓がぎゅっと掴まれたように痛くなった。
そんな蓮を前に大輝は溜め息混じりに口を開いた。
「お守りだったのにな」
「何の?」
何で鍵がお守りになるのかわからなくてつい訊いてしまった。
「紗羽とまた付き合えますようにって」
「……」
あまりにも真っ直ぐな瞳を向けながら話すから言葉に詰まる。
最初のコメントを投稿しよう!