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「効き目ないっすね、それ」
そんな空気を壊すように蓮が吃驚するようなことを口にした。
それに対して大輝は苦笑しながら口を開く。
「……おまえ、言うねぇ?」
「つーか、もう紗羽には手ぇ出さないで下さい」
「『手ぇ出す』って何? もしかしてキスのこと?」
「……っ!」
まさか大輝がそんなことを言い出すなんて思わないから、蓮もあたしも固まってしまった。
「昨日それで喧嘩でもした?」
「えっ、何で?」
熱であやふやになっていた昨夜のことが、少しずつ脳内に浮かんでくる。
「図星? 紗羽の目がちょっと腫れぼったい。泣いたんだろ?」
その一言ではっきりと思い出した。
あたし、昨日蓮に嫌われたんだった。
どうして部屋に来てくれたの?
拳を作った手にぎゅっと力を入れてから口を開く。
「蓮、あたしのこと……嫌いになっちゃったんでしょ?」
「なってねぇよ」
「でも、離れないって言ったのに離れたもん」
昨日のことを思い出して涙が出そうになってきた。
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