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「ちょ、ちょっと待って! 紗羽のことを誘うって何よ!?」
美香の方が焦っている。
「人妻は紗羽のことだったんだよ」
悟が溜め息混じりに言うと、美香は「えーーっ!」と食堂に響き渡るくらいの大声で叫んだ。
「うるせー」
そんな美香に、晴希が自分の両耳に人差し指を突っ込んで耳を塞ぐ。
「じゃあだめだよ、だめっ! 紗羽のことを誘っちゃだめっ! 熱い夜を過ごしちゃだめだよっ!!」
ぷっ……
必死にしゃべる美香が可愛すぎる。
凄くウケる。
「ちょっと紗羽! 何笑ってんのよ!?」
「ごめん、だって美香があまりにも必死だから」
まだ笑いをこらえながらそう言うと隣に立っている蓮が口を開いた。
「俺も必死に反対するからな。晴希さん、誘わないでくださいね」
「はは、誘わねぇよ。俺の入る隙ねぇし」
一瞬だけ瞳の奥に哀しみの色を見せた晴希。
少し胸に痛みが走りながらも、それに気付かないフリをして蓮に話しかけた。
「あ、蓮、……大輝から電話がきた」
「マジ? どうなった?」
「明後日会うことになったんだけれど、ちゃんと話してきてもいい?」
「ん、頑張ってこいよ」
蓮はやさしい笑みを浮かべながらそう言って、頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。
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