あなた色に染まりたい

友達

「何回起こしても起きねぇからキスしてやろうかと思った」

「えっ？」

「嘘」

「……」

『嘘』と言っているわりには真剣な瞳をしているから言葉が出てこない。

「……俺、ダメだ。諦めらんねぇわ」

今度は眉を下げて悲しそうな表情を見せたあと、瞳を伏せてしまった。

そんな晴希に何も応えることもできなくて。

「そんな困った顔すんなって……さっ、帰るぞ」

「うん」

晴希は笑顔でそう言ったけれどきっと無理に笑っている。

そのまま晴希の車に乗ってアパートに帰った。

車の中では二人とも何もしゃべらなくて、カーステレオから流れる今流行りの曲だけが響いていた。

晴希のことは好きだけれどそれは友達として。

でもこうやって一緒にいると晴希を苦しめちゃうのかな。

「着いたよ」

「うん。あっそうだ、明後日までは部屋汚さないようにね」

できるだけ明るく言ってみる。

「はは、それが一番難しいな」

「だね。じゃあまた明日ね。送ってくれてありがとう」

「おー」

少し気まずさを残しながら晴希は帰っていった。