大切な思い出

6/13
前へ
/358ページ
次へ
「この間アパートで紗羽と彼氏が二人でいるのを見てから、こうなることはわかっていた」 大輝が眉を下げながら呟くように話す。 「でも……俺、ちゃんと紗羽に想いを伝えたかった。すっげぇ傷付けたけど、俺の想いが本物だってことを知ってほしかった。……それに自分の気持ちにちゃんとケリをつけたくて」 大輝の言葉の中からは、痛いくらいにその想いが伝わってくる。 これをあの時に聞けていたらまた違った未来があったんだろうな。 でもそんな仮定を考えていてもしょうがない。 今は今しか存在しないのだから。 「大輝の本物伝わったよ。あたし、大輝に愛されていたこと……ほんとに幸せだった……ふ、くっ……」 言葉にしたとたん、大輝へのいろんな想いを思い出して涙がぽろぽろと溢れてきた。 「俺も紗羽と過ごした時間はほんとに幸せだった。紗羽のことが好きで好きで……愛しくてしょうがなかった。すっげぇ大切にしていたのに、最後の最後で……俺、最低なことをした。ほんとにごめんな」 大輝は涙が止まらないあたしをやさしく抱き締めてきた。
/358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6943人が本棚に入れています
本棚に追加