大切な思い出

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「紗羽……幸せになれよ。その相手が俺じゃないのは残念だけど、紗羽には幸せになってほしい」 「うん、大輝、ありがとう」 しばらく大輝の胸に顔を埋めていたけれど、離れようと両手で胸を押した。 でも……あれ、動かない? 「離したくねぇ……」 「え?」 「はは、俺、往生際悪いな。これが最後だと思うと急に離したくなくなった」 その声色だけでも大輝の切ない気持ちが伝わってきた。 「大輝……じゃあ、もう少しだけ」 ほんとはこんなこと良くないと思う。 でもこれが最後だと思うと、あたしの中にある大輝との大切な想い出が突き放すことを拒否した。 そのまま大輝の大きな背中に腕を回した。 しばらくしたら今度は大輝の方から離れた。 ちょっぴり……ほんとにちょっぴりだけ、寂しく感じた。 「大輝、ありがとう」 「ん、紗羽もありがとな。……さ、そろそろ帰るか? 彼氏がまだかまだかって待っているんじゃねぇか?」 「はは、そうかも」 前に大輝と二人で出掛けたあとに、蓮の心の内を聞いてしまったからか、「絶対に待っている」という確信があった。
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