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晴希はそう言うけれど、あたしの中にあるもの全てって……
醜い嫉妬?
「好き」と言葉に出してもらえない不安?
――そんなの、晴希に言えるわけがないよ。
「何も、ない」
呟くようにそう言うと、晴希は口許にふっと笑みを浮かべて、
「嘘つけ。不安でいっぱいのくせに。すっげぇ悩んでるくせに。――目が真っ赤になるほど、泣いているくせに」
晴希があたしに投げ掛けてきた言葉は全て当たっていて。
ついさっき美香に話すまではあたしの胸の中だけに留めておいたもの。
なのに晴希は――。
だけど、それにたいして“イエス”と言えないあたしがいる。
だってそれを口にしてしまったら、あたしはきっと晴希に甘えてしまう。
悟にはできたことでも、晴希にはしちゃいけないんだ。
だから――
「ごめん、車出して」
「は?」
あたしの言葉に晴希は眉を寄せた。
晴希は真剣に話してくれているのに、今あたしのとった行動はそれを完全に無視しているもので。
晴希がこんな表情になってしまうのも頷ける。
だけどやっぱり晴希には話すことができないよ。
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