浮気

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晴希が心配してくれていたのはわかっているんだけれど、あんな風に何でもお見通しと言わんばかりに見抜かれると居心地が悪くなるもので。 車の中という狭い空間に二人でいたのはほんとに息苦しくて、そこから解放されたことで一気に体の力が抜けてしまった。 そして晴希に乱されてしまった心を整えるように「ふぅー」と息を吐き出してから、顔をあげてアパートの部屋に向かって歩き始めた。 鍵を開けて中に入ると、また昼間の光景が脳内に浮かび上がってきて、胸の中にはまたモヤモヤがぐるぐると渦巻き始めた。 一人になるとどうしても思い出してしまうんだ。 蓮のことを信じているし何かあるとは思っていないけれど、やっぱり他の女の子とベッタリくっついているのは凄く嫌。 ベッドにダイブし、枕に顔を埋める。 やだなぁ……こんな風に嫉妬ばかりしている自分。 今日の蓮は大学からそのままバイトへ行くし、あたしが早めに寝ちゃえばこんな醜いあたしを見せなくていい。 だからこの日は蓮が帰ってくる前に眠りに就いた。 それからも蓮には何も言えなくて、だからといってあの状況を直視することもできず、痛い胸を抱えながら日々を過ごした。 ただ蓮との時間は今までどおりちゃんとあったし、それは救いだったのかもしれない。
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