浮気

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その道中、あたしはずっと泣き続けた。 晴希のアパートに入ってすすめられるままに床に座る。 晴希が淹れてくれたホットコーヒーに口をつけた。 「落ち着いた?」 コクンと頷く。 「何があったか訊いていい?」 あたしの顔を覗き込みながら訊いてきた。 「……晴希、ごめんね。美香に電話しようと思ったら、今日から旅行だってことを思い出して」 「あー、そうだったな」 「晴希しかいなくて……」 「ん、俺は、紗羽に呼ばれればいつでもどこでも行くぞ」 そんな晴希の優しさに、止まっていた涙がまた溢れてきた。 「蓮が……蓮がっ……うぅ……」 涙のせいでうまく言葉が出てこない。 「蓮がどうした?」 それでもやさしく訊いてくる晴希に、絞り出すように言葉を紡ぐ。 「朝一で……蓮に、チョコを渡したくて……さっき、部屋に行ったの」 「ん」 「……部屋に、女の子が、いて……うっ、ふ……」 もうダメだ……これ以上は言いたくない。 「紗羽」 そう言って、晴希が抱き締めてきた。
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