浮気

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いつもなら振り払うんだけど、今は晴希のこのぬくもりに甘えたくて…… 晴希の胸に顔を埋めて泣きじゃくった。 晴希にここまで泣いたところを見せたのは初めてで。 ついこの間までは嫉妬していることを知られるのが恥ずかしかったのに。 でもそんなのかまってられなくて。 気が付いたら晴希のシャツにしがみついていた。 だけど、一通り泣いたら我に返った。 「ごめん……晴希、あたし……」 「紗羽、気にすんなって」 晴希はそう言うけれど晴希の胸を借りるなんて…… そんなことしちゃいけないのに。 「あ」 「ん?」 「どうしよう……晴希のシャツ、ごめん」 視界に入ってきた晴希のシャツは、あたしの涙と鼻水でグチャグチャになっていた。 「だから、気にすんなって」 晴希はやさしく微笑みながらそう言って頭をくしゃくしゃと撫でてくれるけれど…… そんなことを言ってくれるのはきっと晴希だけ。 そんな晴希を見ていたらどうしても訊きたくなった。 「ねぇ晴希……どうして男って浮気するの?」 「……ちょっ、待て! 蓮は何をしていたんだ?」 晴希が慌てたように言葉を放つ。 あれ……あたし、言わなかったっけ? そう思いながら、さっき見た光景をそのまま口にした。 「……抱き合って、キスしていた」 「マジ?」 瞳を大きく見開きながらそう言った晴希に、コクンと頷く。
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