浮気

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「晴希、今日泊めて?」 「は?」 「明日は美香んちに行くから。今日だけ、お願い」 やっぱりあたしの行くところは美香か悟か晴希しかなくて、だから今はここしか頼る場所がないってことに気付いた。 「なあ紗羽、俺、最近言ってねぇけど、まだ紗羽のことが好きなんだよ。隙あらば奪いてぇって思ってんだよ。そんな俺んとこに『泊めて』って……手ぇ出さねぇなんてそんな約束はできねぇぞ?」 晴希はどこか苦しそうに話す。 けれど、 「……あたし、行くとこないもん」 「自分ち帰んねぇの?」 「今日は蓮に会いたくない」 「……」 ぴしゃり、と言い放つあたしに、晴希は明らかに困った顔をした。 あたしが晴希を困らせているんだ。 でも、他に頼るところがないんだもん。 それに晴希はあー言っているけれど、本気で手を出すなんて思っていない。 あたしは晴希を信用しているんだ。 そんなあたしはおめでたいヤツなのかな。 なんて考えていたけれど、今はとりあえず少し横になりたくて晴希に声をかける。 「少し横になってもいい? 泣きすぎて頭が痛い」 「ん、大丈夫か?」 「うん」 そう言いながら床に寝転がった。 そんなあたしに晴希は、 「あ、紗羽。そんなとこで寝たら余計に頭痛がひどくなるぞ。ベッド使えよ」 「で、でも……」 それはさすがに気が引ける。 「使えって」 それでも強く言ってくる晴希の言葉に、素直に甘えることにした。 「ありがとう」 そのままベッドに横になった。
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