6944人が本棚に入れています
本棚に追加
でも――
「紗羽、好きだ」
耳元でやさしくそう囁かれて――
ふっ、と我に返る。
『紗羽、好きだ』
蓮からはずっと聞いていない言葉。
今になって胸が、ずきん、と痛んだ。
晴希があたしの中に入ってこようとした、その瞬間――
涙がぽろぽろと溢れてきた。
やっぱり、あたし……
「は、るきっ……ごめ……あたし、やっぱり……れんが、好きっ……ごめ……」
両手で顔を覆って、子供が泣きじゃくるようにわんわん泣いた。
「紗羽……」
やさしく放たれた晴希の声。
それと同時に、ふわりと抱き締めてきた。
「晴希、ごめ……」
晴希の胸で泣いているうちに、またいつの間にか眠りに就いていた。
最初のコメントを投稿しよう!