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次の日、女は死んだ。
飛び降り自殺だった。
彼女の遺書にはこう書かれていた。
「死に場所は自分で決めます。」
彼女は、番組が流された夜のゴールデンタイム午後八時に、一人、自分のアパートのベランダから飛び降りたのだ。
彼女の部屋のテレビはつけっぱなしになっていたと言う。
後日、記者会見を開いた番組ディレクターたちが、深々と頭を下げる姿が全国ニュースで流れた。
人をもてあそんで自殺に追い込んだ悪魔。
そう非難された番組関係者のうち数人は辞職、その中にはあの仕掛け人も含まれていた。
この番組、『あなたの死に場所用意します』、はインターネットで検索をしてはいけない言葉となって、噂で世に語り継がれた。
不思議な事に、記者会見が開かれ、テレビ局の偉いハゲたちが頭を下げていた時にはすでに、仕掛け人のあの赤シャツの男は謎の死を遂げていた。
噂はさらに加熱した。
番組が放送される数時間前に男は友人に謎のメールの話をしていたらしい。
「あなたの死に場所用意します。」
男の携帯には、未登録のアドレスから、この一文だけのメールが大量に届いていたという。
それは、男が仕掛け人として自殺志願者の女と交流を始めた、とあるインターネットの自殺掲示板のアドレスだったが……
結局警察も誰が送ったものだったのかは特定できなかったらしい。
最後のメールは、男の死亡推定時刻の午後八時ぴったりに届いていた。
そして、ほとぼりが冷め、人々がこの事件を忘れ去った頃、
インターネット掲示板に、誰かの手で、ある検索禁止ワードが挙げられるのだった。
『あなたの死に場所用意します』
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