2.スプリング・ハス・カム

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「でも、あれはあれで楽しかったなぁ。」 「想い出になりゃ何でも楽しいだろ。」 「達観しているね、スヴェインは。」 「お前が呑気過ぎんだ。」 シニカルに云ってスヴェインはボストンバッグからミネラルウォーターを出して飲んだ。今日のスヴェインは何かと水を飲む。顔には出さないが、緊張しているのだろう。 レイルからしたらスヴェインはいつも大人びている。悪く云えば大人ぶっている。本当は自分と大して変わらないのに、何かと上に立とうとする。付き合いの長いレイルはスヴェインがそうしたがる理由を分かっていた。失われた家の時から、ただ大人に、世間に流されていた自分達を率先して守ろうとしていた。 ぶっきらぼうで口は悪いけど、根は良い奴なのだ。 そう考えると、レイルには、スヴェインの普段のつんけんした態度が急に可笑しくなってきた。 「ねぇ、スヴェイン。どうして俺達で魔術が使えるのかな?」 「知るかよ。あの施設で急に開眼したんだ。失われた家にいた奴全員が一斉に開眼したってのも、可笑しな話だけどな。」 スヴェインはあの施設に対していの一番に疑念を向けていた。レイルは無意識的な嫌悪感が強かったのに対し、スヴェインは冷静に疑惑をあの施設に向けていた。 「気にしないのが一番だぜ。物事に確かな意味なんて無い。俺とお前が男に生まれた理由を問うようなもんだ。」 「きっといい事に使えたらいいなって思うんだ、俺。」 「どーだろうな。俺と違ってお前はエグいくらい強いからな。似合ってねー位に。」 スヴェインがジロリとレイルを見やった。レイルに比べたらスヴェインは魔術の力は劣っていた。レイルの力は失われた家の子供達の中でも特出していた。極光系という、ハイレベルな魔術を使えるのに対してスヴェインは基礎魔術を完璧に使いこなせるくらいだった。 今まで失われた家でまとめ役を務めてきたスヴェインにとって、レイルは羨望の対象でもあった。
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