2.スプリング・ハス・カム

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「あんまり邪推すんなよ。」 思索に耽るレイルにスヴェインが云った。 「お前はいつも首を突っ込み過ぎる。」 スヴェインはいつもレイルの手綱役だ。気紛れや好奇心で右往左往しやすいレイルの為にスヴェインがやっている事だとレイル本人は分かっていたが、時々スヴェインの言葉には険があった。スヴェインの言葉はレイルに対する警告だった。その警告にはレイルに対する怒りとも、優しさとも、情ともつかない感情が込められていた。レイルはそれを分かりかねていた。 「あなた方を迎えるにあたって、万全の体勢を作れなくて本当にごめんなさい。だけど、あなた達を歓迎する気持ちは変わらない。」 シルクは物憂げさを振り払うように笑顔になった。 「ようこそ、サンドハーストへ。私達の学び舎。此処は皆さんの為にある場所。多くを学び、多くを育み、自分らしく生きていく場にして下さい。此処には仲間がいます。友達がいます。まだ知らない事が、まだ起こっていない出来事があります。それらはきっと、あなた達の未来に希望と豊かさを添えるでしょう。」 シルクの言葉は綺麗だ。声音の綺麗さも相まって、澄んだ響きを場内に届ける。語尾の震えを隠そうとする強張りだけが後味悪く鼓膜を震わせたが。 「では、此処で、私達の大切な仲間、私達の大切なリーダーからの御挨拶があります。どうか、聴き届けてください。」 シルクの言葉と並列しながら、スクリーンが降りてきた。照明が薄暗くなり、シルクは上手に下がった。 スクリーンに映像が映し出された。最初は青一色で、カウントがあるだけの画面だったが、やがて切り替わった。
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