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スクリーンに映し出されたのは一人の少年だった。
やや癖がある黒髪、まだあどけなさが残る顔が印象的だった。だが凛とした眉や、少し切れ長の目、筋の通った鼻は大人に近付こうとしている趣を漂わせていた。何より、一番見る目を引いたのは空色の瞳だ。どこまで澄み切った瞳は吸い込まれそうな深さと自然と視線を奪う明るさがあった。優しさと厳しさを秘めた瞳が彼の精悍さを形作っていた。
『・・カメラ通ってる?これ?ブルーノ!』
開口一声はどこか抜けていた。
『キュー出しただろ!お前見逃すなよ。」
『嘘?!気付かなかった!』
『ほら・・こう。』
『ただ敬礼しているだけじゃん!分かんないぞそれ!ただの敬礼だよ!限り無くただの敬礼だよ!』
『うるっせぇー!いいから喋ろよ、ほら!これ回ってるからな!』
『うわっ、回すなよ!』
少年とカメラマンであろう、ブルーノと呼ばれる別の少年のやり取りは場内の生徒達を笑わせた。他愛無い、軽率なやり取りが不思議と場内を和ませた。
『え、えーっと・・申し訳ない。とんだ茶番を見せてしまった。』
少年は一つ咳をして、畏まった。畏まり切れていない所にレイルは笑った。直接喋った事は無いのに、親近感が湧いた。
『改めて、自己紹介を。俺はサンドハースト生徒会長、ウェルキン・ファウストだ。よろしく。学校ですれ違ったりしたら、気軽に声をかけてくれよ?』
ウェルキン・ファウストは陽気な笑みを絶やさずにいたが、不意に笑みが穏やかなものになった。
『とはいえ、それが出来るのはもうちょっと先になると思う。』
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