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先程までの和みが薄らいだ。驚愕と現実を突き付けられた悲壮が一挙に場内を覆った。
『今頃は、ブリュターニュ戦線のどこかにいると思う。この日まで此処にいたかったけど、どうしようもできなかった。一日違いで出発してしまうなんてな。ちょっとばかし、ユニオンを怨んだよ。まぁでも、夏にはそっちに戻れる。』
ウェルキンの眼差しは優しい。温かい包容力がある。
『君達はきっと希望とか、夢とか、ワクワクとか持って此処に来たんだろう。それなら俺が保証する。此処は最高の学校だ。楽しい事が沢山ある。そこから多くを学べるし、良い友達や仲間も沢山出来る。少しでも不安があるなら、俺達生徒会が助けよう。此処にいる皆、俺にとっては家族みたいなものだから。
・・だけど、これだけは皆に伝えておきたい事がある。』
ウェルキンの顔立ちが凛々しくなった。レイルには大人びて見えた。
『人が生きるっていう事は上手くいかない事とか、不条理にぶつかる事が山ほどある。自分が、周りが望まなくても受けなきゃいけない試練がある。それは此処サンドハーストにいても、いつか必ず訪れる。』
レイル、スヴェインにその言葉は重く響いた。ウェルキンの語調には語り掛けてくるような趣があった。
『試練が訪れた時、人は受けるか、抗うか、逃げるかのどれかを選べる。俺は、皆に進めておきたい。試練が訪れた時、絶対に受けて欲しい。怯えず、恐れず。試練を全うしてほしい。それが必ず、君達の為になる。
試練は厳しいだろう。不条理だろう。それでも戦ってほしい。世界は、夢と不条理で成り立っている。俺達が不条理から逃げれば、誰かが受けなければならない。不条理は消えないんだよ。』
ウェルキンの言葉に力が篭る。
『だけど、俺達には力がある。仲間がいる。これだけのものがあれば、試練なんて乗り越えられる。俺も、皆がいるから理不尽が渦巻く戦場に立てるんだ。』
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