1.アフター・イエスタデイ

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その施設での生活も長くは無かった。 僕とスヴェインが十五歳になった時、施設が急に閉鎖された。職員達は掌を返したように冷たくなり、事情も知らされもせずに、僕達はまた放り出された。 訳が分からなかった。何から何まで、大人達は勝手に決めて、勝手に僕達を振り回した挙句に、勝手に僕達を捨てたんだ。 だけど、幾ら恨み辛みを募らせても僕達にはどうにもできなかった。施設の人達は適当な里親を見繕うと云っていて、僕達はそれに従うしかなかった。実際僕達はまだ子供で、体が少し大きくなっただけで、何も出来ない事には変わらなかった。 途方に暮れていた僕達の前に、また別の大人が現れた。 次の大人は今までの人と一味違った。いや、全然違った。 丈の長い黒いコートを着ていて、フードで頭をすっぽり覆っていた。顔も分からない、不気味な人だったけど、妙に優しかった。これまでの大人達には無い、飾り気の無い優しさだった。その人は「理事長」と名乗った。男のようだった。 僕とスヴェインは訝しげに接していたけど、理事長は優しく、穏やかに僕達の疑心を解きほぐしてきた。 理事長は僕とスヴェインは彼が経営する学校に入れ、他の子供達は信頼できる家に里子として出してくれると云った。話している内容は他の大人と変わらないのに、彼が話していると不思議と信頼できた。 僕とスヴェインは承諾した。 それから数か月経って、僕とスヴェインはある学校に入る事になった。 サンドハースト。それが僕とスヴェインが行く学校の名前だった。
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