転校生――転生校

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 近づく。  近づいて。  やっぱり未鳥高校の紋章だ。  中心にMの文字を構え、葉で翼を象っている銀色の紋章。  俺はハンガーから学ランを取り外すと、くまなく確認する。理由はない。  どうやら新品のようだ。出されてから全く着られてないらしい。  新品か。  俺が、着る筈だった制服。  俺はこれを着れなかったばかりに、何もかもがつまらなくなった。  面白味も、何の味もしなくなった。 「あれ? 何か入ってる?」  胸ポケット。ブレザーと比べて狭くて小さいポケットの中にそれは入っていた。  緑色の手帳に、裏表紙には俺の筆跡で書かれた、俺の名前。  学生手帳?  こんな学生手帳、俺は知らない。  なんだこのシチュエーションは。  何で。  何で。  何で未鳥高校の学生証に、俺の名前が刻まれているんだ?  俺は、この高校に確かに落ちた筈なのに。
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