3人が本棚に入れています
本棚に追加
近づく。
近づいて。
やっぱり未鳥高校の紋章だ。
中心にMの文字を構え、葉で翼を象っている銀色の紋章。
俺はハンガーから学ランを取り外すと、くまなく確認する。理由はない。
どうやら新品のようだ。出されてから全く着られてないらしい。
新品か。
俺が、着る筈だった制服。
俺はこれを着れなかったばかりに、何もかもがつまらなくなった。
面白味も、何の味もしなくなった。
「あれ? 何か入ってる?」
胸ポケット。ブレザーと比べて狭くて小さいポケットの中にそれは入っていた。
緑色の手帳に、裏表紙には俺の筆跡で書かれた、俺の名前。
学生手帳?
こんな学生手帳、俺は知らない。
なんだこのシチュエーションは。
何で。
何で。
何で未鳥高校の学生証に、俺の名前が刻まれているんだ?
俺は、この高校に確かに落ちた筈なのに。
最初のコメントを投稿しよう!