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2⃣シーラと湊くん(2)
「湊くんのばかっ!またこんなに寝る薬買い込んで!!」
ばたばたと音を立て、挙げ句にバッターン!とドアをぶち開けたシーラさんは、その大きな瞳で力一杯僕を睨み付けた。
ああ、また見つかってしまったみたいだ。
ふうとため息をひとつ。
「……シーラさん、また僕のベットの下のダンボールで作ったマトリョーシカ式の宝箱を囮にして、実はマットレスの中に隠していた睡眠薬を見つけましたね」
僕はテレビに映った音痴な顔だけアイドルから、眠剤を沢山両手に抱えたアイドルに視線を写す。
「違うよ。これは本棚のエロ本置き場にあった幼女ものの雑誌(?)の中をくり貫いた所から見付けたの!」
シーラさん、それ雑誌ちゃう。
同人誌や。
「うわー、何その麻薬取り締まり犬もびっくりな嗅覚、プライバシーのへったくれもねぇ。ウザすぎる重すぎ。彼女とかに絶対したくない」
「ぐっ、今日も相変わらず真冬の朝並みの切れるような冷たさの本音……!だから友達いないんだよ分かる!?湊くん!」
「余計なお世話ですよ。とりあえずそれ返してください」
ソファーから立って、シーラさんの抱える眠剤達を迎えにいく。
しかし、「やっ!」というシーラさんの声に阻まれた。
「捨てますからね!湊くんが死ぬのは勝手だけど、プロデューサーに死なれたら困るの!私が!」
「酷すぎません?」
「湊くんがね」
ばさばさばさと次々にごみ袋へ消えていく眠剤。
ああ高かったのにと半分諦め気味に見る。
まあいいか。
マットレスの中は無事らしいし、最悪買い足せば良い。
とりあえず。
「シーラさん、今日は晩ごはんおかず抜きだから」
そう言うと、「えええええ!!!」と声。僕の密かな復讐。
とりあえず、一緒に住んでます。
「…………ん?マットレスの中にまだ隠し持ってんの?湊クン」
「…………げ」
…………買い直しになりそうだ。
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