一人の馬鹿

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「また会えたら良いね」 「なっ、おま―――」 肩に担いだクリスティーナを感じさせない、それどころか通常を遙かに超えた速度でアルティオが駆け出した。 その先は木箱で形成された壁であり、男達は何をするつもりなのかと動きを止めてしまう。 「よ、よ、よっと」 「!?!!?」 木箱の前で跳躍し、僅かな取っ掛かりやズレに爪先を引っ掛けて駆け上がる。 どう考えてもそれは常軌を逸した光景であり、アルティオ以外の者達は驚愕で言葉を失っていた。 アルティオは瞬く間に窓へ辿り着き、眼下の男達を見て微笑む。 「じゃ、そういうことで」 誰も居ない外に身を投げ、石畳の上へ静かに着地した。 そのまま脇目も振らずに走り出し、後ろの倉庫から響き渡った怒号に笑い声をも上げる。
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