一人の馬鹿

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つまり何を言いたいかというと、 「この娘をどうするのかというね」 「むー!!むーッ!!」 場所は街の一角に存在する路地裏倉庫。 そして目の前には、明らかに高級そうな生地が使われたドレスを着た、荒縄で縛られた少女が転がっている。 ドレスでさえ見たのは初めてであるので価値など分からないが、恐らくこうして泥や埃で汚れて良いものじゃない筈だ。 芋虫の如くうねり、威嚇する猫のように唸っている少女は此方をその見事な碧眼で睨み上げている。 どうやら、ただただ見下ろしていることが相当不満らしい。 「やぁ、元気?」 「むー!!!」 「元気そうだね。羨ましいくらいだ」 見るからに誘拐された感じだが、決して己の手が成した悪業ではない。 偶然不審な音を聞きつけ、こうして覗きに来ただけである。
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