一人の馬鹿

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そう言うが少女は全く信用していないらしく、睨んだまま口を引き結んでしまった。 どうしたら信用してもらえるかも良く分からない為、ものは試しとばかりに名前でも訊いてみることにした。 「君の名前はなんていうのかな?」 「………」 「予想なんだけど、結構良いとこのお嬢さんだよね?そんなに上等なドレスは初めて見たよ。ここらの貴族や大商人なんて幾らもいないから、調べれば分かると思うんだけど……面倒だから教えてくれない?」 「……仮に、万が一お前が、妾を攫った者共とは無関係とする」 「万が一も何も、実際関係ないんだけどね」 軽く笑うのを無視して少女は厳しく睨んでくる。 その瞳を軽く覗いてみると、そこには誇りや矜恃、そして己の置かれた状況に対しての恐怖や焦りが見て取れた。
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