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「だからといって妾が名乗れば、奴隷商の帳簿に箔が付くだけであろう」
「あぁそういう心配してるの。大丈夫だよ、僕あの人たち苦手だからさ。人売りなんかしないって」
「それが嘘でないと何故言える?家名が世に悪評を広めるくらいならば、妾は無名の者として堕ちるまでよ」
「それは立派だね。そういう気概が皆にも欲しいよホント」
「……馬鹿にしているのか?」
「どうして?本当に凄いと思ったんだけど」
正直に言ったのだと首を傾げると、少女は眉間に皺を溜めてから、思い切り溜息を吐いた。
その顔は呆れていて、意味の分からないものでも見ているような目で見てくる。
「お前が悪人じゃとしたら、世の中はこれほど荒れていないじゃろうな……」
「あはは、それほどでも」
「褒めておらんのじゃが……まぁ良い。これでも人を見る目には自信もある。名乗っても構わんじゃろう。妾の名はクリスティーナ=フルード=フィリアス=イリス=カラドリウスという」
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