一人の馬鹿

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少女の名前を憶えるために、何度か口の中で転がしてみる。 そういう感性はあまり持ち合わせていないが、なかなか綺麗な名前だと感じた。 「クリスね。僕は……えっと、グラン、ミロ、ライン、バルト………名前はいっぱいあるんだ。どれにしよう」 「名前を勝手に縮めたあげく、名も名乗ろうとしないとは……!!」 「いや待って待って。うーんとー………あぁ、アルティオだアルティオ。アルって気軽に呼んでよ」 怒りを爆発させようとしたクリスティーナに慌てて名乗り、アルティオは軽く自身の胸を叩いてみせる。 クリスティーナは鼻を軽く鳴らし、もぞもぞと姿勢を整えようとする。 「あ、縄でも解く?」 「名を訊ねる前に解かんかたわけ!!」 「じゃあちょっと持ち上げるね」 「お、おい……!?」 怒鳴られたアルティオは片手でクリスティーナの身体を持ち上げる。
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