一人の馬鹿

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あははと笑ったアルティオの背後、つまり入り口の方から、閉じられた金属製の扉をこじ開けようとする引き裂くような音が聞こえていた。 バンッッ!!!!! それは次第に大きくなり、遂には開き切ってしまったような音がした。 同時に大勢の人間が走る足音も響き始め、最奥にいるクリスティーナは焦りを抑えきれない。 思わずのほほんと笑うアルティオの襟に掴み掛かり、顔を寄せて喚き散らす。 「お、おい!!どうするんじゃこの状況!!」 「だからさぁ。残りたい?逃げたい?」 「ど う や っ て!逃げるっていうんじゃ-!!」 「あぁ、逃げたいんだね?うん、じゃあ逃げよう」 軽く笑いを漏らし、アルティオは襟を掴まれたまま強引に首を回す。 その目は倉庫にうず積まれた木箱と、相当高い位置にある木枠の窓を捉えていた。
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