序章

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すると、入口にある自動ドアの手前にいた園子婦人が振り向き、 「何事ですか? みっともない」 そう言って、キッとひと睨みした。 「あぁ……社長、いらしたんですか。 こちら、染谷湊(そめやみなと)さんです。 先日のロンドン出張の際に、危ないところを助けてくださった……」 男が言うと、 「あらっ、あの時の方でしたか。その節は、息子が大変お世話になりました」 態度が一変して、冷たいながらも笑顔が向けられる。 俺は一礼だけして微笑み返した。 値踏みするように頭の先から爪先まで見られて不快だったが…… 「染谷さん。では、こちらへどうぞ」 男に誘導され、俺達はその場を離れた。 この男の名は、白鳥慶一。
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