序章

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大理石の床に、バランスよく配置されたソファーに腰をおろしロビーを見渡すと、見覚えのある婦人がエレベーターから降りてきた。 風を切るように歩いていく後ろに、五人の秘書をしたがえている。 あの婦人は、白鳥グループの社長。 白鳥園子ーー。 小柄で華奢な五十代前半の熟女とでも言おうか、気品がありながら冷たい空気を纏った佇まいは、かなりの威圧感がある。 ロビーにいる社員達が立ち止まり深々と頭を下げていく。 それにこたえることなく、ロビー入口に向かう姿を目で追っていると、エレベーターの方から俺を呼ぶ声がした。 「よく来てくれましたね。染谷さん」 沈黙を破るような威勢のいい声がロビーに響いた。
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