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12-11
『随分楽になった。お前のおかげだ』
「私は何もしてませんよ」
『お前はお前であればそれでいい。その生き様が誰かを癒すなど、お前は想像もしないのだろうな』
「……よくわかりません」
『それがお前の美徳だ』
くくく、と喉の奥で音を鳴らす。
レイリューンは不可解だと言いたげな顔をしているが、恐れる様子などまったくない。
長殿もこちらの能力を利用したり閉じこめたりすることはなく、その長殿を慕う娘はまるで友人のような扱いをしてくれる。
精霊が眠らなければならないほどの孤独は、彼らと共にいるようになってから、ただの一度も感じたことはなかった。
永年の歳月、癒えない水の中にいたことさえも忘れさせるほどに、彼らのそばは、居心地がいい。
『ああ、何て贅沢なことだ』
水飛竜はうんと首をのばした。
―おわり―
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