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2-3
「いや、今回は王城ではなく、ここから南に位置する町にご案内したくてな」
あ、とセリューナが声をあげる。
「知っているようだな。農夫の娘といえども侮れん」
言って、豪快に笑いとばす。
「その町は山の斜面にあってな、かつて土着の精霊を崇める一族の住処だったのだが、今は種族そのものが絶滅し、温泉が発見されたことから観光地となっている」
「絶滅…とは?」
「何もない山だったからな。精霊が現れなくなってから、核となっていた少数の一族が絶えたために、皆ふもとへ降りたり便利な平地へ移り住んだりした結果、誰もいなくなってしまったらしい」
原因に戦や事件があったわけではないと知り、アルスはかすかに安堵する。
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