プロローグ

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1-3  はじめて魔族の世界へ足を踏み入れたときに出会った、厳しくもあり、やさしくもあったひと。  名前はレイリューン・ランザ。  肩をすぎるほどながく伸ばされた漆黒の髪は豊かでつややかで美しく、その容貌は女性がもつべきものなのに、線の細い印象は全くなく、大きな手の節々を見て、ああ、やはり男性なんだな、と思った。  そして薄氷のような水色の瞳は、春のあたたかさと冬の厳しさを同時に映しているように見えた。  はじめて間近に見た魔族という種族。  しかしそれは天の民とさほどの違いはなかった。  遠い昔に世界が隔たってしまったために同じ種族をそう呼ぶようになったのではないかと思えるほどだった。
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