二、天然剣士

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私は一瞬ためらったが、私はただ「そうですか」と言った。 話をするために大広間に行くと、私は彼の隣に座った。 「全員集合したな。じゃあ始めるぞ」 新選組隊士全員が集まり、緊張の中私は昨日の事を思い出す。 (……これが悪夢ならどれほど楽なんだろう…) 平和だった日常を壊され、苛立ちが暴走と化して人を殺してしまうなんて…… 「――以上です」 隣に座る彼の声が聞こえ、私は我に帰った。どうやら昨夜の状況を説明してたらしい。 話が終わり、“土方”という人は私を見る。 「お前、昨夜の事を話せるか?」 「あ…はい……」 ただ頷くしかない。選択肢など無い。ただそれが運命だった。 「私は月神華奈といい――月神神社の双子の当主の一人です」 全て話した。 薩摩潘士が両親を突然殺した事 双子の兄を置いて逃げた事 苛立ちが暴走して薩摩潘士に刀を向けた事――… “あの事”以外は全部話した。 話が終わると新選組の皆さんは無言だった。 それを破ったのは少し怖い人だった。 「…月神神社と薩摩の関係があるというのは無いのか?」 「そんな話は…無いです」 「薩摩が要求しそうな宝とかは無いのか?」 「………っ」 言えなかった。何も言えなかった。 私はただ無言となり、隣にいる彼が首を傾げる。 「……何か知ってるの?」 「……言え…ません……」 「言えない?」 “土方”という人がつぶやき、私を睨んだ。 「何か隠してるなら言ったほうが身のためだぞ?」 「………」 「月神さん?」 「………言えません」 物心が付く頃から、私達はお母さんに言われた。「月神神社の者が人間では無い事を教えては駄目よ」と。 月神神社の宝は私(狐)なのだ。 言えるわけがなかった。言ったら私の運命は暗転する。 「助けてくださったのは礼を言います。けれど皆さんに教えるわけにはいきません!」 気づくと私はそう言って大広間を飛び出した。 「ちょっと月神さん!?」 彼の声が聞こえた気がするが、今の私の耳には届かなかった。
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