二、天然剣士

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どれくらい走っただろうか。気が付くと私は神社に帰って来ていた。 銀杏と紅葉が色鮮やかに染まって散っていた。 神社の奥には私達の家があって、中ではお父さんの死骸が倒れたままだった。 「お父さん…お母さん…」 涙が流れ、私は涙を堪えながらお父さんに布団を被せた。 「必ず…敵は打つから。お兄ちゃんを…取り戻すから」 そう言い残し、私は捺野兄の着物を身につけ、刀を――― 「……取られたままだったんだっけ…」 溜め息を付き、羽織りを取ると家を後にした。 神社に戻って来て、私は足を止めた。 「な、何で……」 目の前に居たのは――薩摩潘士 「見つけぞ狐。我ら薩摩潘の盾となれ」 「だから契約はしない!人殺しの奴に誰が助けるか!!」 「そんな口を叩いて良いのか?刀も無いくせに」 「――っ!!」 (忘れてた…) 私は慌てて後ずさるが、後ろにも薩摩潘士が居て囲まれてしまった。 「さぁ…我らと共に来てもらおうか」 「嫌って言って――」 手を捕まれる瞬間、ザシュッと血が舞い散った。 「……え?」 薩摩潘士から姿を出したのは―――新選組の彼だった。 「なんだか良くわからないけれど――女の子を武器に使うのは良くないんじゃない?」 彼を見た薩摩潘士は青ざめ、刀を向ける。 「貴様…よくもぉぉ!!」 刀を彼にぶつけ、勝負に挑むが―― キンッ ザシュッ 「あが……っ」 呆気なく殺される。 その光景が呆気なさすぎて、涙の何もなかった。 気づいた時には残りの薩摩潘士は退散していた。 刀をしまうと彼は私を見た。その視線に私はガタガタと震える。 勝手に出て行ってしまったから怒りに来たのだろうか。罰として殺しに来たのだろうか。 刀の無い私は、ただ震えた。 ……撫でられるまでは 「……そんなに怖がらなくて良いよ。君は“掟”を守ったんだし」 そう言って彼は私の頭を優しく撫でた。 「あの後…一君が君の神社の事を思い出して、神社には“掟”があるって皆に教えてくれたんだ。何の事かは薩摩潘士との話で微妙に理解したけれど…言いたくないならそれで良いよ」 「……っ」 涙が溢れた。何を安心したのかわからないけれど涙が止まらない。
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