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「ん…」
朝日が町を照らし、私を起こす。
見渡すと和室
ここが何処なのかわからない…
襖がゆっくりと開いて、見覚えのある人が出て来る。
「あれ、起きてたんだ。体は大丈夫?」
「は、はい…」
昨日、あの時に会った彼は私の方に近づくと額に手を付けた。
「熱は…まぁ、下がったかな」
「……熱?」
不思議につぶやくと、彼は焦り気味で話した。
「君、刀振った後倒れちゃったんだよ?…覚えてないの?」
「全然…」
薩摩潘士に刀を振った事は覚えている。でもそのあとは……
「………」
彼は無言のまま、私を見つめていた。
「……君さ、女の子なんだよね?」
「?…はい」
「剣術って誰から教えてもらった?」
「両親から半分……」
「……ふぅん…」
彼は不思議そうな顔をしたあと、心が揺れてしまうほどの微笑みを浮かべた。
「凄いね。女の子がそんなに上手いなんて」
「……」
褒められるとは想っていなくて、私は顔を真っ赤に染めた。
「あれ?顔赤いけれど…大丈夫?」
「へ、平気です……」
(この人…凄く意地悪だぁ~!)
恥ずかしくて横を向くと、彼はこう言った。
「だから強い君と勝負しない?」
「……え」
振り向き直すとまた意地悪な顔だった。
「勝負…?」
「うん。木刀でね」
ニコニコと話され、理解するのに時間がかかった。
「な、何故ですか?」
「んー?僕が見てみたいから。君の剣裁き」
「はぁ…」
「それに――」と言って私に見せたのは、私の愛刀……
「僕に勝たないと刀は帰してあげないから」
「え…」
「やるよね?」
「……はい」
ニコニコと私に見せる彼の笑顔が、…少し怖く感じた。
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